芸術凧展[ART KITE](副題:空舞う絵画展)について
芸術凧展[ART KITE](副題:空舞う絵画展)について

日本の伝統芸術である凧と、現代最先端の美術との融合によって生まれたユニークな企画展である。現在活躍中の世界18か国、約100名の美術作家たちが和紙に描いた絵を、日本各地の熟練した凧職人たちの手によって伝統的な和凧に仕立て上げ、完成した「アート・カイト」を日本の代表的な建造物である姫路城をバックにあげるという大規模な企画展です。
本展のねらいは「ホモ・ファーバー、ホモ・ルーデンス(働く人間、遊ぶ人間)」というテーマが示すとおり、現代美術と和凧の両者に共通する「遊び」の要素を強調することによって、難解だと思われがちな現代美術に楽しく親しんでもらうとともに、和凧という伝統芸術の魅力の再認識をうながし、さらにはあらゆる文化の根底にある「遊び」の意義について考えてもらおうとするものであった。
参加作家はR・ラウシェンバーグ、P・ヴンダーリッヒ、ザロメ、フリーデンスイヒ・ フンデルトヴァッサー、ニキ・ド・サン・ファル、フランク・ステラ、D・ナッシュ、ゲルハルト・リヒター、ホルスト・ヤンセン、A・タピェス、K・アペル、V・ヴァザルリ、横尾忠則、白髪一雄、菅井汲、篠原有司男、靉嘔、堂本尚郎、草間彌生など、世界の第一線で活躍中の作家ばかりであった。また和凧の種類も、江戸凧、土佐凧、浜松凧、六角凧(新渇)、ケロリ凧(愛知)、八日市凧(滋賀)などのほか、作家オリジナルの変形凧も含まれたバラエティ豊かなものであった。
宮城県美術館、三重県立美術館、滋賀県立近代美術館、姫路市立美術館、ハラ・ミュージアム・アーク、静岡県立美術館、名古屋市美術館の各国内館、および海外の美術館を3年間に渡って巡回する。その後全作品がオークションにかけられ、その全収益金は災害救済金として国際連合に贈られる予定である。

小野田實 制作の現場

作家による「アートカイトWORK88-2.24」の制作現場から
「空の珊瑚礁(副題)はこのようにして繁殖していった。姫路にて~1988年2月24日」


小野田實は「マルの行為者」と呼ばれ、自らもそのマルを「私のマル」と呼んでいる。尽きることを知らない忍耐力と根気で、彼は何千万、何億という数のマルを描き続け、そこから独自の絵画世界を創り出してきた。彼の絵は極微の単位から出発して、空想やたゆまぬ努力、規律によって、宇宙的次元へ発展させている。彼の絵が有機物の生命に似ているのは、絶えることのない繁殖の原理が支配しているからである。彼の絵はマル自身から生まれ、上下左右の区別なく、あらゆる方向に増殖し続ける。絵の縁を越えてもまだ勢いよく成長を続け、永久に増え続ける。画家自身はそのマルを生命のパラフレーズ、そして同時にオートメーション工場における大量生産のパラフレーズと理解している。
 60年代、具体グループに参加していた頃、小野田はこのマルの世界を、レリーフ状の盛り上がった板の上に表現していた。今回の凧の表面も一見、波うっているように見えるが、それは下地に描かれた曲線や、精妙にグラデーションのつけられた地塗りによってその効果がでているのである。
 神秘的な規則に従って並べられたこれらのマルは、ときには幾何学的なモチーフになり、ときには花のモチーフになる。このマクロ構造の魔力は、鮮烈な、自らの内から輝き出る力にある。絵の全体像はミクロ的な断面図や花、サンゴなどを彷彿とさせる。構成的にバランスのとれているこれらのマルは、静寂と調和を求めている。
 それでもこの絵には、一抹の悲劇性が漂っている。測りしれない分子の集積と果てしない繁殖は、人の行為の無力さとむなしさを思い起させる。この作品において我々人間に対峙しているのは、画家の姿をしたシジフォスである。

以上、「芸術凧」図録より

【2007/03/11 12:44】 | [9]芸術凧-ART KITES | page top↑
| ホーム |